小学生が運転する自転車にはねられて、女性が意識不明
裁判所は、その親に対し、約9500万円の支払いを命じた…
最近、世間で話題のニュースですが、
「厳しすぎる」という意見もあれば、
「当然である」という意見もあり、
親の責任を巡り賛否両論ある判決ではないでしょうか?
今回は、この問題について、お話しさせていただきます
まず、民事上の責任について考えます
一般的な小学生には、自分の起こした問題によって、
どのような法的責任が生じるのか?
それを判断する能力 (責任能力) がありません
また、当然のことですが、小学生には支払能力がありません
それゆえ、被害者としては、保護者である親の責任を
追及することになります
親の責任を追及できる法的根拠は、民法714条1項です
責任無能力者である児童の加害行為について、
保護者である親は、被害者に対し、
その損害を賠償しなければならない
と定められています
但し、親が監督義務を十分に果たしていた場合には、
親の賠償義務はありません
そこで、上記裁判においては、「親の監督義務」が
争点となりましたが、裁判所は、「自転車の運転に関する
十分な指導をしていたとはいえず、親としての監督義務を
果たさなかった」として、親の賠償義務を認めました
厳しい判決? or 当然の判決?
その評価は、立場によって異なるかもしれません…
余談ですが、加害者の子供が小学生ではなく、
高校生である場合はどうでしょうか?
一般的に、高校生であれば、責任能力がある
と考えられることから、民法714条1項に基づき、
親の監督責任を追及することはできません
この場合は、民法709条に基づき、親の不法行為責任を
追及することになります
例えば、子供が以前から非行を繰り返していたにも
かかわらず、親が何ら注意をせずに放置していた等、
親の不注意と子供の加害行為によって発生した損害との
間に相当因果関係が認められる場合には、
子供に責任能力がある場合でも、親が賠償責任を負う
可能性は否定できません
ところで、裁判上の争点である「親の監督義務」について、
皆さんは、どのようにお考えでしょうか?
子供の行動に対して、細かく監督・指導すべきなのか?
大人がどこまで子供の行動に干渉すべきなのか?
保護者によって、その考え方は大きく異なると思います
しかし、子供の起こした問題が、民事訴訟に発展した場合、
親が、子供に対し、日頃からどの程度のしつけ・指導を
行っていたのか?
それこそが、最大の争点となります
しかも、子供に責任能力がない場合には、
親として十分な監督義務を果たしたことを
積極的に立証しなければなりませんが、
日頃のしつけについて証明することは
決して容易ではありません
「我が家は、自由放任主義ですから…」
そのような教育方針は、所詮言い訳であり、
裁判では一切通用しないということです
以上、子供の事故と親の責任について、
少しお話しさせていただきました
最近、特に気になるのが、スマホを操作しながら、
自転車に乗っている学生さんが、とても多いことです
歩行者が、直進する自転車を避けながら移動する…
そんな光景をよく見かけます
自転車の運転だけでなく、スマホの操作についても、
十分な指導をしていたのか?
民事訴訟では、間違いなく争点になるでしょう
日頃のしつけや指導
それらは子供の為に行うべきものですが、
親自身や家族の為でもある…?
親の責任を巡る今回の判決を通じて、
なんとなくですが、そのように感じています
阿倍野区の司法書士西田辺駅前事務所 makosurf